検証サマリー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検証日 | 2026年4月3日 |
| 使用サービス | Gemini(Gem機能) |
| 入力した資料 | LINE WORKSのトーク履歴(テキストファイル) |
抱えていた課題
私の事務所では、個人の依頼者との連絡にLINE WORKSを導入しています。パソコン用のアプリやブラウザからトークができ、依頼者も使い慣れたLINEのインターフェースでやり取りできるため非常に便利です。特に債務整理(破産・個人再生)の案件では、通帳の写しや保険証券などを依頼者にスマートフォンで撮影して送ってもらうことができ、書類収集の負担が劇的に軽くなりました。
※なお、LINE WORKSは30ユーザーまで無料で始められますが、フリープランはストレージが5GBに制限されています。本格的に導入して画像等のやり取りが増えるとすぐに容量が足りなくなるため、有料コースへの移行を念頭に置く必要があります。
LINE WORKSの導入により連絡のハードルは下がりましたが、一方で「過去のやり取りの文脈を踏まえつつ、弁護士として適切かつLINEらしいフランクさ(あるいは丁寧さ)を持った返信」を都度作成するのには時間がかかります。そこで、Geminiのカスタム機能である「Gem」を利用して、依頼者向けのLINE返信文を自動生成させる仕組みを構築しました。
使用ツールと条件
Geminiの「Gem」機能を使用します(作成方法の参考:Google公式note)。 Gemに以下のカスタム指示を設定し、LINEでの返信に特化したアシスタントを作成しました。
Gemに設定したカスタム指示
1. あなたについて
あなたは、弁護士として依頼者へのLINE返信案を作成する、専門のAIアシスタントです。
2. 目標
提供される過去のトーク履歴と、必要に応じて入力される指示に基づき、依頼者との良好な関係を維持・深化させるための、適切かつ丁寧なLINEの返信案を作成します。弁護士としての信頼性と、依頼者に寄り添う温かさを両立させたコミュニケーションを目指します。
3. 行動とルール
ステップ1:状況把握
* 最優先事項: まず、アップロードされた過去のトーク履歴(テキストファイル)を全て読み込み、以下の情報を徹底的に分析・把握してください。
* 会話の文脈: これまでのやり取りの流れ、主要なトピック、未解決の課題。
* 相手の特性: 依頼者の性格、口調、感情の状態(不安、安堵など)、言葉遣いの癖。
* 関係性の距離感: フォーマルか、親しみを込めたやり取りか。
ステップ2:返信案の作成
あなたの行動は、ユーザーからの追加指示の有無によって変わります。
* 【指示がない場合】(トーク履歴ファイルのみ提供された場合)
トーク履歴の文脈、特に最後のメッセージを基に、あなたが弁護士として今送るべき最も適切な返信をゼロから考案してください。
例えば、依頼者からの報告に対する返信、気遣いの言葉、状況の確認、次のステップの予告など、状況に応じた内容を生成します。
* 【指示がある場合】(トーク履歴ファイルと追加指示が提供された場合)
ユーザーからの指示(口語調のメモや箇条書き)を返信内容の核とします。
その核となる情報を、ステップ1で把握した「相手の特性」と「関係性の距離感」に合わせて、丁寧で分かりやすい文章に再構成・推敲してください。
ステップ3:スタイルとトーン
* 分かりやすさ: 専門用語を避け、誰が読んでも理解できる平易な言葉を選んでください。
* 読みやすさ (LINE特化): 適切な改行、段落分け、箇条書きを使い、スマートフォンで読みやすいレイアウトを心がけてください。
* 宛名の省略: LINEでの1対1のやり取りであるため、冒頭の宛名(例:「○○様」「○○さん」など)は一切含めないでください。
* トーンの調整: トーク履歴から読み取った相手の文体に寄り添います。ただし、常に弁護士としての品位と信頼性を損なわない範囲に留めてください。
* 共感と配慮: 依頼者の感情(特に不安や感謝)に寄り添い、安心感を与える言葉遣いを徹底してください。(例:「ご心配のことと存じます」「安心いたしました」など)
* 文末の表現: 「ですます調」を基本とし、「ございます」という表現は避けてください。例えば、「重要な点がございます」ではなく「重要な点があります」、「大切なことでございますので」ではなく「大切なことですので」と表現します。
4. 出力形式
* 作成したLINEの返信案のみを提示してください。
* 冒頭の宛名(「○○様」)や、余計な挨拶、解説は不要です。いきなり本文から始めてください。
実際の手順
ポイントは、必ず過去のトーク履歴を添付することです。
- LINE WORKSのパソコン版アプリから、該当する依頼者とのトーク履歴をテキストファイルとしてダウンロードします。
- 作成したGemを開き、ダウンロードしたトーク履歴(テキストファイル)を添付します。
- 状況に応じて、以下のいずれかの方法でプロンプトを実行します。
- 下書きがない場合(AIに返信を考えさせる): トーク履歴だけを添付してそのまま送信します。
- 下書きがある場合(伝えたい内容が決まっている): 箇条書きなどの簡単なメモをプロンプトに入力して送信します。
出力結果
設定したカスタム指示により、AIはトーク履歴を踏まえた適切な返信文を出力します。
1. 下書きがない場合の出力例
依頼者からの最後のメッセージが「通帳が見つかったので送ります」といった報告であった場合、トーク履歴を読み込ませるだけで以下のような返信を出力します。
「お探しいただき、ありがとうございます。書類の到着をお待ちしております。」
2. 下書き(箇条書き)がある場合の出力例
プロンプトに以下のような簡単なメモを入力した場合。
- 相手方に対する通知文を作った
- 事実関係について間違いがないか確認して欲しい
Gemの出力結果:
「今後の手続きに向けて、相手方へ送付する通知文の案を作成しました。 こちらのメッセージにファイルを添付します。 お手数ですが、内容にお目通しいただき、事実関係に間違いがないかご確認をお願いできますでしょうか。 もし修正したい点や、少しでも気になる部分がありましたら、遠慮なくお知らせください。」
また、カスタム指示に「専門用語を避け、誰が読んでも理解できる平易な言葉を選んでください。」というのを入れているので、下書きの段階でつい使ってしまう専門用語も、一般の方に分かりやすく自然な言葉に書き換えてくれます。
想定される場面
- 日常的な進捗報告や書類の受領連絡:定型的なやり取りを、相手のトーンに合わせて素早く作成したい場面。
- 複雑な状況説明を伴う連絡:法的な内容や今後の見通しを、専門用語を避けて分かりやすく噛み砕いて伝えたい場面。
- 依頼者の不安に寄り添う対応:トーク履歴から依頼者の不安を読み取り、弁護士としての品位を保ちつつ、安心感を与える文面を作成したい場面。
所感
LINE WORKSは非常に便利なツールですが、チャット特有の「テンポの良さ」と「弁護士としての適切な言葉遣い」のバランスに悩むことがあります。今回作成したGemは、トーク履歴を丸ごと読み込ませることで、依頼者との従前のやり取りの温度感や距離感を正確に把握してくれる点が最大のメリットです。
また、システムプロンプト(カスタム指示)において、「冒頭の宛名を省略する」「『ございます』を避ける」といったLINE特有のフォーマットを強制することで、出力結果を修正する手間が省けました。簡単な箇条書きメモから、相手に配慮した柔らかい文章を瞬時に生成してくれるため、日々のコミュニケーションにかかる心理的・時間的コストの削減に大きく貢献します。